第5回 院長コラム 「食べられない」をどう考えるか?
在宅医療では、ご家族から、
「最近ほとんど食べなくなりました」
「点滴をした方がいいでしょうか」
というご相談をよく受けます。
大切な家族が食べられなくなれば、何とか栄養を取らせてあげたいと思うのは自然なことです。
ただし、「食べられない=必ず点滴が必要」とは限りません。
食欲が低下する原因には、感染症、脱水、便秘、味覚、薬の副作用、口腔内の問題など、治療によって改善できるものがあります。
一方で、病気の進行や身体機能の低下に伴って、自然に食事量が減ってくることもあります。
そのような場合には、点滴をすることがかえってむくみや痰、息苦しさにつながることもあります。食べられなくなったときが、その人の寿命と考え、むりに点滴しないという選択肢もあります。
だからこそ私は、「点滴をするか、しないか」だけを考えるのではなく、「今、この患者さんにとって何が一番大切なのか」を考えることが重要だと思っています。
好きなものを一口食べる。冷たいものなら口にできる。水分を少しずつ取る。
食べることは栄養だけではありません。
楽しみであり、ご家族との大切な時間でもあります。
患者さんの状態を診ながら、ご本人とご家族と相談し、一番納得できる方法を一緒に考えていきます。
院長 片桐 敏雄